「今年も飲めた!」“命の木”マルラの果実を飲むーマルラ飲酒体験記

毎年12月から1月の終わりにかけて、マルラの木にはたくさんの果実が実ります。用途はさまざまですが、果実からジュースを絞って発酵させ、お酒にして村のお祭りで楽しむのが、この季節の風物詩となっています。今年は久しぶりに、知人が作ったお酒を飲む機会がありました。今回はお酒の食レポを中心に、現地の人にとってのマルラの意味についてもご紹介します。
ーーVerde Marula社のアイコンでもあるマルラという果実については、当コラムでも「マルラってどんな木?〜アフリカでの用途〜」などの記事でお伝えしてきています。今年は収穫の時期に造られる、出来立てのお酒を飲む機会があったとか。
Verde Marula そうなんです。マルラの収穫の時期になると、各地で果実からお酒を作るのが風物詩になっていて。お祭りなんかをしたりします。以前のコラムを書いた頃は、実際に作っているのを見たわけじゃなくて、作り置きされたものをいただいた程度でしたから、今回はもう少し詳しいお話ができると思いますよ。
ーー マルラについては、コラムのレポートや商品紹介のページにも紹介ページがありますし、そのほかインスタライブなどさまざまな場面で語り続けていると思いますが、果実はどんな感じで収穫するのですか?

Verde Marula 果実は12月の終わりぐらいからだんだん大きくなり、落ちた実が黄色に熟したところで収穫されます。大体梅の実くらいを想像してもらえるとわかりやすいかも。その熟した実をお酒にしたりするほか、ジャムにしている人もいるようです。
ナショナルパークなどでは、象がマルラの葉や枝、幹も根っこも、全部食べちゃったり。ほかにも猿とか動物はその実が大好きなんです。人間だけのものじゃないんですね。
ーー神の木とか命の木とエレファント・ツリー(Elephant Tree)とか、そんな別名がついてますよね。
Verde Marula 伝統的に、その木全体が人の生活に活用されるものなんですよね。
葉っぱや根っこは漢方薬として使われていたり、果実からお酒やジュースができたりして。そして種からオイルや調味料みたいなものができたりと、本当に全体がアフリカの人の恵みとなっているようなものなので、一部の地域では、神聖なものと考えられています。
アフリカでは、先祖信仰が土着の宗教として根付いていて。なにか困りごとがあると、先祖と語り合うんです。その先祖と語り合う時にマルラの木の根元に行って儀式をすると先祖の魂と会話できると信仰されていて、マルラの木を神聖なものとして扱っている地域が場所によってあります。
ーー 依り代(よりしろ)として崇められてもいるんですね。
●マルラの収穫と生活に根ざした素材
ーーそんな生活の各所に根付いているマルラ。その実の収穫は、年1回なんですよね。
Verde Marula 場所にもよると思うけど、だいたい12月から1月の終わりにかけて。長いところだと2月の終わりぐらいまでやっているところもあるかもしれません。モザンビークでは1月くらいから雨期が始まって、湿度が高くて結構暑い時期。おおよそ、収穫後の2月にお祭りをやるところが多いですね。今年はお祭りまではいけませんでしたが、去年は行きました。
ーー 大体これくらいの時期になるとみんなそわそわし始めるみたいな感じなんですか? リオのカーニバルや日本の夏祭りの花火大会のようなものかな。
Verde Marula そこまで大々的な感じじゃないかな。なんかもっと日常的な雰囲気というか…もしかしたら日本で例えると梅を収穫して、梅酒を作るみたいな習慣と似てるかも。もちろん、日本と比べるとエンタメが少ないので特に村の人にとっては、お祭りをすごく楽しみにしてるのかもしれない。外に開かず、村の中だけでやっているところもありますから。
ーー今回、お酒を作ってくれたのは、お2人が住んでいるところからどれくらい離れた場所ですか?
Verde Marula だいたい30分ぐらいかな。元々、前の事業の工場がマプト市内ではあるんですが郊外にあって、そこのすぐ近くで製品を購入してくれていた人たちです。
実はコレまで、きちんと目の前で作ってもらって、それを飲んでみるというのを、ちゃんとしたことがなくって。モザンビーク人の知人に頼んでみようとなったんですが、都市部だと実を集めたりするのも大変かなと思って。
●実録!マルラのお酒、搾りたてはどんなお味…?

ーー 実際、美味しいんですか?
Verde Marula そう、すごく美味しいんですよ。去年もちょっと作ってもらって飲んだんですけど、美味しいなと思って。今年も、飲みたいよねっていう気持ちもあり。
ーーどんな味がするんですか。
Verde Marula なんて言えばいいんだろ。爽やかで少し酸味のある発酵ジュースのような…例えるならポカリスエットに近い味です。
ーー アルコール度数が高くてすぐ酔っぱらっちゃうようなものなんですか?
Verde Marula それが作りたては全然アルコールがないので、子供でも飲んでますね。そのジュースを空気に触れさせることで発酵が進み、数日置くとお酒になるんですね。
ーー今回、絞る工程も見学したそうですが、作り方もわかりますか?
Verde Marula ざっくりですけど、実の皮を剥いて種を取って、残った実から手で果汁を絞ってそれをこして、そこに適量の水を入れて、容器に入れたらおしまい。なんか美味しく作る秘訣は、その水をどのぐらい入れるかの塩梅らしいですよ。
ーーへえ! じゃああそこのばっちゃんはマルラ酒作りの名人だって、人気の作り手がいたりするですか。
Verde Marula 以前、私たちが取材した村では、この人が1番うまいみたいなことを言われていて。そのうまいって言われた人がなんか照れに照れてて、可愛かったです。
ーー いいですね。じゃあ「名人◯◯のマルラ酒」みたいに、販売とかしてる人もいるってことですか。
Verde Marula 伝統的にはマルラのお酒はみんなで分け合って飲むみたいな感じなので、販売しないものなんだそうですよ。でも首都のマプトは商業化されているので、お祭りの時期になると売ってるみたいですね。発酵する前はジュースとして飲めて、お酒になると結構長期間保存できるみたいです。
ーーフレッシュなしぼりたてを飲んだということは、発酵する前のジュース状態のものだったんですよね。お酒はそこまで飲んだことはないんですか。
Verde Marula 今回、事前に作ってあったものと、その場で作ってくれたものを飲み比べすることができました。酒好きにとっては美味しくて、また飲みたいですね。とくに、ジュース状態のものは飲みやすくておすすめですが、いっぽうで地酒とか手作りのお酒が苦手な人は難しいかもしれないです。
ーー地酒って結構強烈なやつありますもんね。
Verde Marula アジアでもつくられる椰子酒とかもそうだし、アフリカにも各地でいろんな地酒があるけど正直、口に合わないものも多いですね。それでいうとマルラのお酒は口当たりがライトで日本人でも飲みやすいものだと思います。
ーー現地の人の生活が垣間見える感じもあっていいですよね。
Verde Marula アフリカの人ってみんなお酒好きなんですよ。宗教的に飲めない人も多いけど、お祝い事と言えば酒、何かの理由をつけて酒を飲む、みたいな。
ーーそこは日本人の、昭和の呑兵衛と同じですね。
Verde Marula 一方で、特にマブトは首都なので、お酒の作り方を知らない、飲まない、興味がないみたいな人もいたりとか。少し文化が失われてるっていうか、変わってきてるんだなっていうのもあって、マルラについて知っている人を見つけて話を聞く作業が今、面白かったりもします。
●社名にマルラを冠してる理由
Verde Marula 私たちは今、マルラの種から取れるオイルで事業をしていますが、実際にアフリカで生活をしていて、あんまり現地のお酒を飲んだりするような機会がなくて。都市在住だと積極的にかかわらない限りマルラの新酒を飲んだり、お祭りにいくようなことはないかと思うんです。
Verde Marula お酒は季節限定の特別なものって感じなんですね。そもそもVerde Marula を立ち上げる以前は、モザンビークで別の事業をしていて、普段の生活でそんなに接触機会が多くなかったマルラとはどんな感じで出会ったんですか?
Verde Marula モザンビーク人でマルラオイルを絞っている人がいて、その人から「日本で売れないかな」みたいな流れからまずはオイルを「ちょっと使ってみてよ」と言われて使ってみたところ、ベタベタしないのに翌日、しっとりしていてすごくびっくりしたんです。
アフリカのオイルというと、ココナッツオイルとかもあるし、モリンガオイルとかともあるんですが、どれも想像の枠を超えない使用感だったんで、マルラオイルは使ってみて驚いたのが最初です。
ーー 最初は、化粧品として買ってみてみたいなとこからだったんですね。
Verde Marula はい、マルラオイルと出会って、驚きがあってそこから、マルラという木が非常に面白いことが分かって、色々調べるようになりました。それからマルラを意識してアフリカの日常生活を観察してみると、もう日常的に、マルラネタがいっぱいあるんですよ。
ーー すでにアメリカとかヨーロッパでは結構人気になっているというマルラ。日本だと知名度はまだまだですよね。
Verde Marula はい、これからですね。最近、弊社もお客さんからのお問い合わせが増えたりはしてますが、例えば日本の検索サイトでマルラを検索したら、幾つかブランドもあり、日本においてのマルラ市場の拡大してきてるなと感じます。
ーー社名にもあるし、非常に象徴的な素材です。
Verde Marula アフリカ発の事業で、マルラは私たちの原点です。マルラのような素晴らしいアフリカの原料をもっと日本に広めていきたいねという思いで、社名にマルラの名前を使ってます。アフリカ発の素材をつかって、美容とか健康のエリアで、面白いことをしていきたいですね。
ーー今回は事業とは関係ないけど、会社として根幹となる素材について調査できましたね。
Verde Marula ちゃんと目の前で作ってもらって、そういうプロセスを見るっていうのが初めてだったから。印象深くてとてもいい経験になりました。
ーー いいですね。おそらく日本人でマルラについては誰よりも詳しいですよね。マルラで1冊、本が書けるくらいまで、引き続き調査をお願いします。またこちらのコラムでも、別の観点でレポートしていきましょう。